圧迫骨折を放置しておくことで引き起こされる危険性が高い、神経麻痺についてまとめてみました。
それが交通事故やスポーツ事故などの強い衝撃であれ、転倒や尻もちなどの弱い衝撃であれ、何かしらの形で外部から加えられた力によって脊椎の椎体がつぶれてしまうのが圧迫骨折です。
なので患部を固定し安静に過ごすことで、折れた骨がくっつくのを待つ、これが圧迫骨折の基本的な治療法となります。
そうした保存治療を続けていても一向に折れた骨がくっつかず、骨折部がいつまでも不安定に動いてしまうケースがあります。
その状態のまま放置しておくと、やがて動いた骨の一部が後ろ側に飛び出し(=破裂骨折)、それが神経を圧迫。その結果、麻痺などの神経症状となって表われる危険性もあります。
圧迫骨折の症状は、大きく分けて「痛み」と「しびれ・麻痺」の2種類と言われていますが、若い人の場合には強い衝撃によって圧迫骨折になるケースが多いぶん、始めから両方の症状が認められる傾向にあります。
しかし高齢者の場合には、転倒や尻もち、あるいは咳やくしゃみといった軽い衝撃で圧迫骨折になるケースが多いため、最初は痛みのみ、場合によっては痛みさえ感じないこともあり、「大した怪我ではないだろう」と思って、得てして放置してしまいがちです。
その結果、受傷からしばらく経ってから神経症状が表われ、気づいたときには既に重篤化しているなんてことも間々あります。
圧迫骨折がそのまま元の通り治ればいいのですが、骨変形が進行したことで神経を圧迫してしまうと、下肢のしびれ・歩行障害といった症状が現れます。これが、椎体遅発性神経麻痺と呼ばれる症状です。神経麻痺の症状が発生した場合は、すぐに治療を切り替えなくてはいけません。放置しておくとどんどん神経が麻痺してしまい、適切な治療を受けても歩行困難のまま、排尿障害をかかえたままになるなど、普段通りの日常生活に戻れなくなってしまうので注意が必要です。
麻痺の出現は、骨折してすぐ現れるわけではありません。最初は圧迫骨折が軽度だったとしても、骨変形の進行とともに出現します。期間としては骨折してから2か月から3か月程度でしょうか。圧迫骨折の痛みに気づかず、神経麻痺が起こって初めて診察を受け、圧迫骨折していると診断される人もいます。
椎体遅発性神経麻痺が起こった場合、固定して安静にしているだけでは改善しない圧迫骨折であると判断され、BKPと呼ばれるセメント固定を行う、もしくは脊椎固定術と呼ばれる方法で治療していました。損傷した椎間板は取り除き、骨を器具で固定して脊椎の安定性を高めるという方法です。神経を触らずにできるため安全性が高く、身体への負担も少ないとされています。
ただし、脊椎固定術よりも体への負担が少ない治療法である、セメント固定での治療も増えています。骨折している部分をバルーンで広げ、骨セメントを入れます。骨セメントが固まることで、術後早い段階で痛みを解消できるのがポイントです。どちらの治療法を受けるかは病院の方針や状態によっても異なります。特にBKPは、適用できる場合とできない場合があります。骨が破壊されている、背骨の変形がひどくなっているといった症状があると、BKPではなく固定術もしくは矯正骨切り術での処置をしなくてはいけません。
BKPは体への負担が少ない方法であるとご紹介しましたが、特に高齢者の場合には向いています。高齢者は合併症の問題や体力の少なさなどから、負担がかかりすぎる手術は受けることができません。しかし、BKPであれば高齢であっても、手術を受けられる可能性が高いでしょう。
手術を受けてからの生活は、まず普段通りの生活を取り戻すために全力を尽くさなくてはいけません。退院後、特に生活でやってはいけないことはありませんが、つらい姿勢は避け、重たい荷物を持たないなど負担をかける行動は制限しましょう。また、転倒には十分気をつけてください。転倒で再度圧迫骨折が発生してしまう可能性があります。
そして、何よりも大事なのは、圧迫骨折を起こしてしまう原因である、骨粗しょう症を治すことです。骨粗しょう症とは、骨の中がスカスカでもろく、すぐに折れてしまうような弱い状態のことを指します。圧迫骨折を保存的治療もしくは手術で治しても、骨粗しょう症が治っていなければまた圧迫骨折を招いてしまいます。治っては折れての繰り返しは嫌ですよね。骨折しないような強い骨を作る生活を心がけましょう。
カルシウムをしっかりと摂取したり、そのほかの栄養素も偏ることなく整った食生活を意識してみてください。人間の体は食べたものでできています。食べたものから栄養を取り込むことになるので、食生活はとても大事です。また、同時に骨を強くする運動も欠かさずに行いましょう。ただし、運動は一度圧迫骨折をしている人にはハードなものもあるので、無理しすぎないように自分のペースでできる運動から始めてくださいね。
圧迫骨折は繰り返す可能性があります。二度と骨折で悩まされないために、術後は日ごろの生活を整えるところから取り組んでみましょう。