ここでは圧迫骨折の再発について、その原因や予防法について紹介しています。
圧迫骨折の中でも、骨粗鬆症を起因としたタイプの圧迫骨折は、一度起こると再発しやすいことが指摘されています。
脊椎圧迫骨折は、比較的若年者ではスポーツ外傷や転落による事故など、大きな外力で発生する。一方、高齢者においては、基礎的疾患として骨粗鬆症を有するために、くしゃみ、起き上がり、いすに腰掛けるなど日常生活動作による比較的軽度な外力によっても圧迫骨折を生じる場合がある。高齢者では圧迫骨折が一度ならず何度も生じるため、異なる椎体の骨折のたびごとに徐々に脊柱は円背変形を生じるようになる。
例えば骨折した数別に見た、2度目の骨折発生率を調べた海外の研究では、試験開始時の骨折数0回だった人が1年以内に骨折をした率が3.6%だったのに対し、2回以上骨折していた人が1年以内に骨折を再発した割合は24%となっていたそうです。この研究からも分かる通り、骨折数が多くなればなるほど、1年以内に再度骨折するリスクが高くなるのです。
参考:『Risk of New Vertebral Fracture in the Year Following a Fracture』Lindsay R.: JAMA, 285, 2001
では、どうして圧迫骨折は再発をしやすいのでしょうか? その大きな理由の一つが、骨粗鬆症により「骨がもろくなっている」ということです。
骨粗鬆症は、骨密度の減少により骨がもろくなる病気です。スカスカの骨になってしまえば、それだけちょっとした力で骨が折れやすくなります。実は、高齢者の椎体圧迫骨折の患者数を見てみると、70代の約25%、80代の43%が圧迫骨折をしていることがわかっています。
一度圧迫骨折すると、連鎖反応的に骨折した部分の上下の骨も骨折する傾向にあると言われています。痛みが強くなり受診してみたら、圧迫骨折が複数箇所で併発していたということもあるのです。
そのため、圧迫骨折が再発しやすい人の特徴は、やはり骨粗鬆症になりやすい人の傾向と重なる部分が多くあります。骨粗鬆症になりやすいと言われる人は、主に次のような方です。
上記の特徴に一つでも当てはまる方は、圧迫骨折をしないためにも、骨密度を維持するよう心がけましょう。
参考:『-臨床医のために- 骨粗鬆症性脊椎椎体骨折』日医大医会誌2009
圧迫骨折が再発すると、治療して改善したとしても再び腰や背中の痛みを感じるようになります。また、複数箇所で圧迫骨折を繰り返せば、背骨が骨折のたびに圧迫変形を起こします。その結果、徐々に背中が丸くなり、背が縮むなど見た目にも大きな変化が見られるようになります。
また、圧迫骨折をした際にはしばらく強い痛みが見られるものの、治療の経過とともに強い痛みは緩和します。しかし、骨折を繰り返してしまえば、慢性的に腰や背中の痛みを感じるようになってしまいます。
骨粗鬆症で起こる圧迫骨折は、治る際に脊椎椎体部分の骨がくさび型に変形したまま固まってしまうことがあります。再発を繰り返すことで、変形した骨が神経を圧迫してしびれや強い痛みなどを伴うこともあります。
他にも圧迫骨折は他の骨折と違って活動量の低下や、筋肉痛、息切れ、風邪をひきやすくなる、食欲低下などの様々な症状が現れます。圧迫骨折を再発すれば当然これらの症状も再び見られる可能性があるのです。
高齢の方の場合、圧迫骨折の再発により、安静にする期間が長くなれば、廃用性症候群という全身の筋力の低下などにより寝たきりを招いてしまう可能性もあります。特に骨粗鬆症になりやすい女性の場合、気づかないうちに圧迫骨折が再発しているケースもありますので注意が必要です。
圧迫骨折を再発しないためには、一にも二にも骨を丈夫にするための生活習慣が大切です。 圧迫骨折の再発防止につながる、骨粗鬆症の治療と予防方法を見ていきましょう。
骨粗鬆症が起因して圧迫骨折をした場合、手術もしくは安静にして治療に取り組むこととなりますが、平行して骨粗鬆症の治療を行うことも大切です。 骨粗鬆症の治療は「薬物療法」「食事療法」「運動療法」の3つの治療方法を全てきちんとこなすのが肝心です。食事療法と運動療法については後述するとして、薬物療法の内容をおおまかに把握しておきましょう。
骨粗鬆症の治療に用いられる薬には「骨の吸収を抑える薬」「骨の形成を助ける薬」「骨の吸収と形成を調節する薬」の3つのタイプがあります。
骨の吸収を抑える薬としては、女性ホルモンやカルシトニン、ビスフィスフォネート、イプリフラボンなどが挙げられます。また、骨の形成を助ける薬としてはビタミンK2、骨の吸収と形成を調節する薬としてはビタミンD3や、カルシウム剤などがあります。
女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が減り、骨粗鬆症の発症リスクは、男性の2倍ほど。女性の方は発症する前から強い骨づくりを目指すことも大切ですから、定期的に骨密度検査などを受けるようにしましょう。
圧迫骨折の再発を予防するためには、食生活でも骨を丈夫にする食事を心がけましょう。 カルシウムの多い、豆類や牛乳などの乳製品、魚介類、海藻類を積極的に食べるとともに、骨を作るのを助けてくれるビタミンKが多い食品も意識して食べるようにしましょう。ビタミンKの多い食品としては、納豆やチーズ、レタス、大根の葉などがあります。 また、腸からカルシウムが吸収するのを助けるためのビタミンDが多く含まれるイワシやレバー、カツオ、干ししいたけなども積極的に食べるといいですよ。
一方で、コーヒーやお酒、スナック菓子などは飲みすぎ・食べ過ぎが逆に骨粗鬆症を進行させやすくするのでご注意を。
圧迫骨折に限らず、骨粗鬆症の方はちょっとした力で骨折しやすくなっています。そのため、日々の生活環境も圧迫骨折しにくい環境づくりを心がけることが大切。
例えば、階段や段差には滑り止めや視認性を高めるシールを貼る、雨の日には出かける機会をなるべく減らす、トイレには手すりを設け、夜でも明るくする、家の中は常に片付けておく、など今日からできることも沢山ありますよ。
骨粗鬆症が進行して脊椎の骨折が治っていない場合は、運動も気をつけて行う必要があります。脊椎骨折が治る前の骨粗鬆症の方の運動の基本は、体重の負担が少ない体勢から背中やお腹の筋肉を鍛えるトレーニング方法が有効です。 また、運動は、骨を丈夫にするだけでなく転倒を予防して骨折のきっかけをなくすという意味もあります。高齢になってからの骨折は、寝たきりになる大きな原因に。寝たきり防止のためにも、一度でも圧迫骨折をしたという方は、理学療法士やドクターからの運動指導を受けながら、効果的な運動ができるよう心がけましょう。
圧迫骨折の再発を防ぐには、一にも二にも骨づくりが肝心です。骨粗鬆症の悪化を予防して、圧迫骨折の再発を防ぐことができれば、毎日の生活もより生き生きとしたものになることでしょう。