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便・尿の失禁

圧迫骨折を放置しておくことで引き起こされる危険性が高い、さまざまな症状についてまとめてみました。

圧迫骨折が引き起こす怖い病気の数々

圧迫骨折によって脊椎の椎体がつぶれることで背骨が曲がり、さらに飛び出た骨によって神経が圧迫されることで、さまざまな麻痺症状が引き起こされます。

「麻痺」というと通常、しびれに代表されるような感覚的、あるいは運動機能的な麻痺状態が想像されますが、脊椎脊髄の損傷に伴う麻痺はそれだけに止まりません。

たとえば、呼吸器や消化器といった内臓、または自律神経などにも麻痺症状は表われます。

内臓(泌尿器)の麻痺症状ということで言えば、膀胱直腸障害もそのひとつ。脊髄損傷に伴って発生する神経症状で、膀胱と直腸が同時に機能障害を起こすことから、このように呼ばれています。

膀胱直腸障害は、脊椎が損傷し、脊髄反射中枢の働きが阻害されることによってもたらされるわけですが、脊髄反射中枢の働きが阻害されることで尿意や便意を感じることができなくなりますので、結果的に失禁・頻尿・便秘などの症状を引き起こすことになります。

このように膀胱直腸障害になると、日常生活すら困難な状態に陥りますので、手術によって治療するのが一般的です。

一方、自律神経などの麻痺症状で言うと、知覚全般の麻痺、あるいは前方注視障害といって前方が見えにくくなる症状を発するケースもないではありません。

こちらも膀胱直腸障害同様に、日常生活を送るのに困難を来たすものですので、やはり手術によって治療を図っていくことになります。

圧迫骨折それ自体も、寝返りを打てないほどの激しい痛みが伴うなど深刻な症状であることは間違いありません。

しかしこれまでのページで見てきたとおり、病状を悪化させてしまうことで生じる、脊椎側弯症・後弯症神経麻痺歩行障害逆流性胃腸炎、そして直腸膀胱障害や前方注視障害などは、時に日常生活を送ることさえ難しくするほどの大変怖い病気です。

圧迫骨折は絶対に放置することなく、たとえ保存治療を行うにせよ、一度早めに整形外科で診てもらうのが肝心です。

膀胱直腸障害はQOL(生活の質)を低下させる

圧迫骨折によって引き起こされる排尿・排便障害は、その人のQOL(生活の質・充実度/Quality of Lifeの略)を著しく低下させます。

命が助かり意識があったとしても、排尿・排便をコントロールできなくなり尿や便を漏らしてしまうようになったら、人生における充実感は著しく低下してしまうでしょう。

そのため、膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)による排便・排尿障害の治療は基本的にQOLを維持する治療法が中心となります。

脊髄損傷レベルによって症状・対処法が異なる

排便・排尿障害の程度は脊髄の損傷した部位によって異なります。

脊髄

引用:脊椎・脊髄の病気(脊椎と脊髄の解剖学) | 医療ポータルサイト

上の画像は、人の脊髄です。上にいくほど脳が近くなります。

この神経は頸髄(けいずい)8本、胸髄(きょうずい)12本、腰髄(ようずい)5、仙髄(せんずい)5本に分かれており、それぞれの神経がさまざまな筋肉の動きや感覚を支配しています。

そのため、損傷部位によって排泄機能障害の程度も異なります

排尿障害

脊髄損傷部位 排尿レベル 排尿反射の有無 失禁の種類 膀胱 尿意
頸髄(C1-C8)~胸髄(T1-T12) 自動性神経因性膀胱 排尿反射がある 反射性尿失禁 萎縮 なし
腰髄(L1-L 5)~仙髄(S1-S5) 自律性神経因性膀胱 排尿反射がない 溢流性尿失禁 伸展 なし

上の表は、損傷した部位による排尿障害の程度と失禁(尿や便を自分の意志とは関係なく漏らしてしまうこと)の種類をまとめたものです。

自動性神経因性膀胱の症状

延髄(えんずい)・胸髄(きょうずい)を損傷すると、自動性神経因性膀胱になります。この場合は排尿反射が残っています。

排尿反射とは、膀胱に尿が一定量(約350ml~400ml)溜まった時に膀胱内圧が上昇した(膀胱の中に溜まった尿が膀胱を刺激すること)結果、膀胱の筋肉が収縮しておしっこを出そうとするはたらきのことです。

しかし、自動性神経因性膀胱では、膀胱が萎縮(いしゅく/小さくなること)してしまうため、少しおしっこが溜まっただけで膀胱内圧が高くなり、意志に関係なくおしっこがでてしまいます。これを反射性尿失禁といいます。

自律性神経因性膀胱の症状

腰髄・仙髄を損傷すると、自立性神経因性膀胱になります。この場合は自動性神経因性膀胱とは異なり、排尿反射は残っていません。

そのため、膀胱の中に尿が溜まりやすく、膀胱は伸展(しんてん/尿が溜まりすぎて、膀胱の筋肉が伸びてしまうこと)してしまいます。

膀胱内に尿がどれだけ溜まっても排尿反射がおきないため、膀胱は尿でパンパンに膨らんでしまいます。

そして膀胱の、尿を溜めることができる許容量を超えた時、意志に関係なくおしっこが漏れてしまいます。これを溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)といいます。

排尿障害の対処法

おむつ・尿とりパッド

尿失禁(反射性・溢流性)が認められる場合は、自分の意志で排尿をコントロールできないため、おむつや尿とりパッドを着用する必要があります。着床することで尿で衣服が汚れることを防げます。

集尿器(しゅうにょうき)

集尿器

引用:集尿器 - meddic

集尿器とは上記のような器具です。これを陰部に当てておくことで、尿をパックの中に集めることができます。つねに当てた状態で使用するので、尿失禁によって衣服が汚れる心配もなく、また陰部が尿でかぶれることもあまりありません

しかし見た目が悪く、上から衣服を着用することが難しいというデメリットがあります。

間欠的自己導尿(かんけつてきじこどうにょう)

カテーテル

引用:NPO 快適な排尿を目指す全国ネットの会(CUN)・福祉用具に関してのお役立ち情報コーナー

間欠的自己導尿とは、上記のカテーテル(シリコン製のチューブ)を自分で尿道から膀胱まで挿入して尿を出す方法です。

自己導尿の目的は残尿をなくすことです

なぜなら、残尿(排尿後に膀胱内に尿が残ってしまうこと)があると膀胱に溜まった尿が腎臓に逆流し、水腎症(すいじんしょう/腎臓が尿でパンパンにふくれてしまうこと)や、腎盂腎炎(じんもうじんえん/最近が腎臓に入り込んで感染症を起こすこと)などを引き起こしてしまうからです。

この方法は、自分でカテーテルを挿入する手技を身につける必要があります。誤った手技で導尿を行った場合、感染症穿孔(せんこう/尿道や膀胱をカテーテルで傷つけて穴があいてしまうこと)を引き起こすリスクがあります。

尿道バルーンカテーテル

尿道バルーンカテーテル

引用:尿路感染症|脳神経外科疾患に随伴する全身感染症|看護roo![カンゴルー]

尿道バルーンカテーテルの留置では、自己導尿のカテーテルの先にバルーンがついたものを使用します。

膀胱の中でバルーンをふくらませることで、カテーテルが尿道から抜けないようにすることができます。カテーテルが抜けないため、寝たきりの方や自分で自己導尿ができない方に適応されます。

この方法で、水腎症のリスクを減らせます。

しかし、カテーテルは外と交通しているため、細菌が膀胱内に入りやすく膀胱炎(ぼうこうえん/細菌が膀胱内に侵入して炎症を起こすこと)を引き起こしやすいというリスクがあります。

そこで、感染を予防するために最低でも2週間に1回はカテーテルを入れ替える必要があります。カテーテルの交換は基本的に看護師が行います(自宅で交換する場合は、訪問看護を利用することになります)。

膀胱瘻

膀胱瘻

引用:ストーマの種類にはどんなものがある? :あなたのストーマを知っておこう |アルメディアWEB

膀胱瘻(ぼうこうろう)は、尿道の炎症や閉塞などで尿道からカテーテルを挿入することができない場合に適応されます。

皮膚から直接カテーテルを膀胱まで刺します。そのため、カテーテルが貫通している皮膚の部分が感染症を起こさないように、毎日洗浄する必要があります。洗浄は一般的に看護師に行ってもらいます。

また、カテーテルは感染予防のために3~4週間に1回は交換しなくてはいけません。交換は医師が行うので、その都度病院に行くか、もしくは訪問診療を受ける必要があります。

排便障害

脊髄損傷部位 排便反射の有無 いきむことができるか 肛門

①頸髄(C1-C8)~第5胸髄(T1-T5)

できない 収縮
②第6胸髄(T6-T12)~腰髄(L1-L5) できる 収縮
③仙髄より下(S1-S5) できる 弛緩

上の表は損傷した部位とそれによる排便機能をまとめたものです。

①頸髄(C1-C8)~第5胸髄(T1-T5)

この部位の脊髄を損傷した場合は排便反射が残っています。

排便反射は2種類あります。

1つは胃・大腸反射です。これは、食べ物が胃に入ると、脳が大腸に蠕動運動(ぜんどううんどう/腸が肛門に向かって中身を押し出すように動くこと)を活発にするよう司令を出します。すると、腸の中の消化物が肛門へ押し出されて排便が起きます。食後にトイレに行きたくなるのはこの反射のおかげです。

もう1つは直腸反射です。これは、直腸に便がたまることで直腸内圧(直腸内に溜まった便が直腸を刺激すること)が上昇し、蠕動運動が活発になって便意が起こる現象です。

しかし、第5胸髄から上を損傷してしまうと、お腹に力を入れる筋肉が動かせなくなってしまうため、排便時に腹圧をかけることができなくなってしまいます。

また、肛門は収縮しているので便が肛門から出にくい状態です。

②第6頸髄(T6-T12)~腰髄(L1-L5)

この部位の脊髄を損傷した場合も排便反射が残っています。また、先ほどと違って、お腹に力を入れて腹圧をかけることが可能なので、排便時にいきむことができます。

しかし、上記と同じように肛門が収縮しているため、便を排出しにくい状態であるといえます。

③仙髄より下(S1-S5)

この部位を損傷した場合は、排便反射が無くなります。排便反射が無くなると、腸の蠕動運動が弱くなり、便秘になってしまいます。

また、肛門が弛緩(肛門の筋肉がゆるんでしまうこと)しているため、下痢をしている場合は便失禁(意識に反して便を漏らしてしまうこと)してしまうことが多くなります。

排便障害の対処法

摘便刺激

摘便刺激とは、肛門に指を挿入して直腸の内側に触れることで直腸内圧を刺激して排便を促す方法です。

便秘によって固くなった便は腸の中にフタをするような形で便の排出を妨げます。そこで摘便によってその便を取り出すことで、排便を促すことができます。全ての排便障害に有効です。

下腹部の圧迫

マッサージ手順

引用:排便体操(臥位プログラム)|高齢者のための排便体操|排便ケアの実践|排便ケア|排泄ケア 実践編 |排泄ケアナビ

排便時に下腹部を手で腸の走行に沿って、肛門に向かって圧迫します。これも全ての排便障害に有効ですが、いきむことができない①の第5胸髄からの損傷による排便障害に特に効果的です。おヘソから時計回りに「の」の字を描くように圧迫すると、腸の走行に沿ったマッサージをすることができます。あくまでマッサージなので、痛みを感じるくらい強く圧迫する必要はありません。

グリセリン浣腸

グリセリン浣腸

引用:製品シート|医療関係者の皆さまへ|日医工株式会社

グリセリン浣腸は、人肌程度(36℃)に温めたグリセリンを直接直腸内に注入することで、直腸内圧を上昇させて排便を促す方法です。

さらに、グリセリンによって便の滑りが良くなるため、排便しやすくなります。グリセリン浣腸はとても排便効果が高く、病院でも便秘の患者さんに良く使用されています。

グリセリンは食品添加物にも使用されるもので、直腸に入れても安全面で問題はありません。

しかし、浣腸は手技を間違えると直腸穿孔(ちょくちょうせんこう/腸に穴が開くこと)を引き起こすため、家族が行う場合は看護師からしっかり手技を学ぶ必要があります。

交通事故による膀胱直腸障害は遅れて出現する

交通事故による圧迫骨折の場合、膀胱直腸障害が見過ごされることがあります。

事故直後は排泄機能に問題がなくても、入院中に傷から流れ出た血液が固まって脊髄の神経を圧迫していた場合など、膀胱直腸障害の症状がゆっくりと現れることがあります。

この場合、納得のいく後遺障害の認定を受けることができなくなることがあります。なぜなら、事故と障害の因果関係が証明しづらいからです。

後遺障害とは、交通事故によって負った治癒が困難な身体障害のことで、1級から14級まで等級が分かれています。

この等級によって、自動車損害賠償責任保険や慰謝料の金額が決定されます。

膀胱直腸障害では、下記の等級認定を受けることができる可能性があります。

等級
症状
保険金
第3級3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
2219万円
第5級2号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
1574万円
第7級4号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
1051万円
第9級10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
616万円
第12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの
224万円
第14級9号
局部に神経症状を残すもの
75万円

引用:後遺障害等級表

このように、認定される等級によって受け取ることができる保険金の金額が大きく変わります。

等級は「損害保険料率算出機構」という組織が、実際の症状や医師の診断書をもとに認定します。認定された等級が不服な場合は、異議申し立てをすることができます。

分野が法律と医療に関係しており複雑なため、当事者だけでの解決は難しいといえます。もし異議申し立てをする場合は、交通外傷に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。

患者の会を活用しよう

膀胱直腸障害は、その障害の程度で対処法が大きく異なります。また、管理できない対処法を選ぶとその人や家族のQOLを大きく低下させてしまいます。

そのため、医師や看護師の説明を聞き、自分が納得ができる対処法を選ぶようにしましょう。

どうしても納得できない場合は、患者の会に参加してみると良いです。この会では、同じ膀胱直腸障害に苦しんでいる患者さんやその家族がお互いにアドバイスをし合ったり、体験談を聞いたりすることができます。

膀胱直腸障害によるストレスや悩みを少しでも解消するために、是非参加してみてください。

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